とんでもない酷暑が続いた夏を引きずってか、
九月に入ってもなかなか秋らしい風は吹かず。
エアコンは消せないし、野菜は高いし、
サンマもあんまり獲れないらしいしと。
ろくでもない秋になりそうな始まり方をしたものが。
彼岸の中日、秋分の日を境に、
前日と10度もの差のあるほど涼しくなったから、
「このところのお天気って、ホンット我儘だよなぁ。」
気まぐれな人のこと、お天気って言うのがつくづくと判るぜと。
大きなドングリ眸に柔らかそうな小鼻という幼いお顔へ、
やれやれなんてな、一丁前の表情を浮かべ。
久し振りに飲みたくなったとカップスープを作ったの、
だのに怖々とカップの縁へ口をつける奥方なのへ、
「…猫舌なの、忘れてたとか。」
「ううう。」
何度も何度もふうふうと吹き冷ましているその手元に、
ほれ貸してみと手を延べた、大きなのっぽの旦那様。
受け取ったカップを大きめのシチュースプーンで掻き混ぜると、
時折掬い上げてはそちらを吹き冷ましてやっておれば。
自分もテーブルを廻って来、
ちょこりとすぐの傍らへ座り直したルフィが覗き込んで来たのへと、
ほんわりと苦笑をし、
ほれとその口許に向け、危なげなく差し出してやる。
え?と意外そうにお顔を上げたものの、
えへへぇと微笑うとそのままそろりと口をつけ、
「あ、美味いvv」
やっぱ好きだな、これと。
にゃはりと微笑うルフィの屈託ないお顔こそ、
ゾロの側にも御馳走だったか。
商談の際の粘り腰が鬼のようとまで言われる営業マンなのが嘘のよに、
同じようにほわりと微笑ってしまうところが他愛ない。
極端なほど急に冷え込んだのは実質1日だけで、
陽が差せば、昼間日中は汗ばむほどの日もあるのだが。
それでもあの猛暑残暑に比べりゃあ雲泥の差で、
朝晩は半袖では鳥肌が立つくらい。
そんな肌寒さのせいと、それから、
気の早い新製品のCMを観たからか、
「暑いからって食欲が落ちる方じゃないけどサ。」
シチューとかグラタンとか、
かぼちゃのコロッケに、そうそう鍋物とかおでんとか。
大好物の温っかいもの、
やっと汗かかないで食べられる時期になったんだなぁって。
「実はココアも飲みたかったから、
昨日のうちに買ったんだよなvv」
ほくほくと微笑ったそのお顔こそ、
そりゃあ暖かなまろやかさに満ちており。
あんまり熱いと、
カップさえ持てないんじゃなかったか?
平気だもんvv
またゾロが冷ましてくれんだろ?
にししと楽しそうに笑い、
こちらの胸元へ頬からという擦り寄り方をするのが、
悪戯を企む仔猫のようで稚(いとけな)く。
まだまだブランケットにくるまってという、
本格的な温もりを欲しいシーズンじゃあないけれど。
週末はもう10月なんだよな。
制服は衣替えだ。
そうだな、早いよなぁ。
だって言うのにと思えば、とんでもなくフライングで、
気の早いもいいところな“巣籠もり”だけれど。
それでもこの温もりは、心地のいいこと この上なくて。
わざとに窓を開け、夕方間近の風を入れつつ、
互いの肌で温もってみる、初秋の昼下がり。
〜Fine〜 10.09.27.
*とんでもない残暑だったのも困りものでしたが、
急転直下の寒さもびっくりでしたよね。
例年だと10月半ばにぐぐっと冷え込むんですのに、
半袖がこんな早くにお役御免となりかけたのは、
ここ数年では お初じゃなかろうか。
めーるふぉーむvv 
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